普段はマナーよくマジックを楽しむテンヨーのスタッフも、製品のアイデアを見るときは、かなり厳しい目で観察します。鈴木徹が最初に試作した「X-レイファイル」のモデルは、カードを少し厚めのケースに入れ、カードの模様を当てるというものでした。他の開発スタッフに見せたところ、ケースの中にかなり空間があったため、タネはわからないけれど、何となくどこかで見ている感じがするといわれました。そこで鈴木は、もっとも過酷な条件を自らに課しました。カードを封筒に入れ、さらに封筒もフラットなケースに押し込み、のぞき見る余地をいっさいないようにして、作り直したのです。その結果、前のモデルの仕掛けを知っている人まで、まったくタネの予測のつかないものに仕上がりました。もちろん最初のモデルであっても十分マジックとしては成立しており、ほとんどの人はそのタネを考案した時点で満足してしまうことでしょう。実際のマジックの演技においては、タネそのものより、どれだけ楽しく見せられるかということの方が重要ですが、タネを考案する時点においては、徹底して見破られないタネを追求してみるということも大切です。それによって「単なる不思議さ」から「ミラクル」への跳躍が生まれるのです。
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